2024年の"推し"本 Advent Calendar 2024 の 7日目の記事です。昨日はまつーらとしおさんでした。
今年読んだものの中で、特に推したい本として『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』(以下、本書)を紹介します。
本書を読むと、今まで読んだ本をまた読み返したくなります。
読解の最大の障害は「わかったつもり」である
本書は、小学2年生の教科書に掲載されている物語を読むところから始まります。その物語は平易な文章で書かれており、特に詰まるところがなく全て理解できている感覚になると思います。おそらく、これ以上同じ文章を読み返そうと思わないはずです。
しかし読み進めていくと、すぐに物語の読み込みが甘かったことに気付かされます。なぜ最初に読んだタイミングで物語を読み返す気にならなかったのか、それは「わかった」状態になってしまったことが原因であるというのがこの書籍の主張です。
「わかった」状態は、ひとつの安定状態です。ある意味、「わからない部分が見つからない」という状態だといってもいいかも知れません。したがって、「わかった」から「よりわかった」へ到る作業の必要性を感じない状態でもあるのです。浅いわかり方から抜け出すことが困難なのは、その状態が「わからない」からではなくて、「わかった」状態だからなのです。
「わかった」状態とは、よくエンジニアでいう「完全に理解した」に近いかもしれません。全てを理解している、いわば全能感に浸っているような感覚です。 ただ、一旦その安定している状態になると、もう一歩深く理解することができなくなってしまいます。
「わかる」から「よりわかる」うえで必要なのは、「わかったつもり」を乗り越えることなのです。「わかったつもり」が、そこから先の探索活動を妨害するからです。
この状態をどう脱していくかは、文章を読む上で非常に重要なポイントになります。
「わかったつもり」を乗り越える方法
「わかったつもり」状態から抜け出す方法がいくつか紹介されています。1つは「矛盾」や「疑問」を見つけることです。一見すると「矛盾」や「疑問」を見つけると、文章の内容を理解できていないネガティブな印象になりがちです。しかし実はその発見が、次の「よりよくわかる」ためのきっかけになることがあります。
「矛盾」や「疑問」は、次の「よりよくわかる」ための契機となるものです。「矛盾」や「疑問」はネガティブに捉えられることも少なくないのですが、むしろ次の解決すべき問題を発見できたという意味で、「認識の進展」という観点からはポジティブな存在なのです。
ここはしっくりくる内容でした。文章を読みながら疑問を見つけると、自分で内容を検証したり、整理して読み直したりしたくなります。文章を素直に読みすぎず、違和感を見つけるプロセスが「よりよくわかる」に繋がるというのは納得感がありました。
この他にも「わかったつもり」状態から抜け出す方法として、要注意ワードを見つけることや文脈を整理することなど、色々なテクニックが紹介されています。本書では、これらのテクニックを実際の題材の文章を読みながら紹介しています。そのため、腑に落ちやすいと思います。
読解とは終わりなき探求
最後に一番刺さった内容を紹介して締めようと思います。
「わかったつもり」の状態から、「わからない」状態などを経由して、「よりよく読めた」状態に移行できれば、それで読みが終わるわけではありません。自分でかなり読めた、読みの進展があったという文章に、しばらくして出会ったとき、そこに、新たな「わからなさ」を見いだしたり、部分間に関連をつける新しい解釈を思いついたりすることは、珍しくありません。(中略) つまり、「よりよく読めた」という状態は、「以前よりはよく読めている状態」かも知れないけれど、その状態を乗り越えるための、もっとよい読みが存在するのです。
文章は一度読んで終わりではありません。特に名著や名文は何度も読み返すことで、その度に新たな発見や学びに気づけるものです。 より良い読み方を学ぶと、新しい本だけではなく、今までの本もまた読みたくなると思います。
ここまで読んで本書の内容を「わかったつもり」になっていませんか? 気になる方は、ぜひ『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』を手に取ってみてください。
ありがとうございました。2024年の"推し"本 Advent Calendar 2024 、次はうーたんさんです。